多部田 茂教授|東京大学大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻

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東京大学
教員・研究室紹介

教員

たべた しげる

多部田 茂教授 ( 兼担 )

講座:海洋環境システム学分野

電話番号:04-7136-4718

メールアドレス:tabeta@edu.k.u-tokyo.ac.jp

Webサイト:
多部田 茂教授 海洋環境システム学分野

略歴

1989年3月東京大学工学部船舶工学科卒業
1994年3月東京大学大学院工学系研究科船舶海洋工学専攻博士課程修了(博士(工学))
1994年4月横浜国立大学工学部建設学科講師
1996年4月横浜国立大学大学院工学研究科人工環境システム学専攻助教授
1997年9月~12月デルフト工科大学客員研究員
1999年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻助教授
2001年12月~2002年6月シドニー大学客員研究員
2002年7月~10月マサチューセッツ工科大学客員研究員
2007年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻 准教授(現職)


教育活動

大学院:海洋環境論、環境生態学特論、環境システム学プロジェクト、環境システム学概論, 環境システム学輪講
工学部システム創成学科:水圏地圏環境工学、環境リスク論、地球科学II、環境エネルギー応用プロジェクト、環境エネルギー領域プロジェクト
教養学部:持続可能社会実現のための海洋利用:食糧・資源・エネルギー、エネルギー問題・地球環境問題を考える


研究活動

海洋環境問題の解決や海洋を利用した人類の持続的発展のための技術開発への貢献を目的として、人間活動による沿岸海洋環境への影響に関する研究や、海洋環境変動の把握や予測のための数値モデルに関する研究に取り組んでいる。
人間活動や人工構造物による海洋環境への影響に関しては、現地における観測や実験、数値モデルによるシミュレーションの両方のアプローチから研究を行っている。具体的な対象としては、例えば新たな海洋空間利用方法として提唱されている超大型浮体式構造物の沿岸海洋環境への影響予測に関する研究などを手がけてきた。この研究では東京湾におけるメガフロート実海域実験などにおけるフィールド調査と、生態系モデルを用いた数値シミュレーションによって浮体構造物の環境影響を検討し、浮体表面に付着する生物の活動による水質への影響とそれらの落脱による底質への影響が非常に重要であることを明らかにするとともに、物質循環という観点から環境影響を評価した(文献1など)。また、海底構造物等によって人工的に湧昇流を引き起こし漁場の造成をねらう技術の評価なども手がけている(文献2など)。
海洋環境変動のメカニズムを把握したり将来の環境変動を予測するためには、数値モデルによるアプローチが不可欠である。モデルを用いて環境変動を議論する際には現実の変動する外力を駆動力としたシミュレーションが重要であることを提唱し、特に沿岸域の現象に対するモデルの再現性の検討や高精度化を行ってきた(文献3など)。また、海洋における様々なスケールの現象を同時に解析するために、多段階の入れ子格子(Nested-grid)を用いて静水圧近似モデルと非静水圧モデルを結合したマルチスケール解析用の海洋モデルを開発した。このモデルでは、例えば湾全体などの広域の計算の負荷を比較的低く抑えながら、構造物周辺など静水圧近似が成立しない場所での局所的な流場を精度良く計算することができる。環境改善や制御のために人工的に鉛直混合を促進させる技術の評価や、複雑な地形や浮力効果によって強い対流を伴う自然現象の解析など、工学から理学まで広い分野への応用が期待できる(文献4など)。
また、生物生産性が高く気候変動に敏感であるということなどから、地球環境にとって非常に重要な海域である氷海域の生態系モデルを開発し、氷海域生態系の特徴であるアイスアルジ(氷に付着した藻類)の役割や氷海域の物質循環について調べた(文献5など)。
その他、ネスティングを用いた外洋・沿岸結合モデル、リモートセンシングの観測値を用いたデータ同化、沿岸と外洋の相互作用やイベント現象の物質循環への寄与、海底湧出地下水の沿岸海域環境への影響についての研究なども行っている。
[文献]
1) 北澤大輔, 藤野正隆, 多部田茂, 超大型浮体式構造物の海洋生態系への影響に関する研究, 日本造船学会論文集, Vol.192, pp.277-287, 2002.
2) S. Tabeta, T. Kinoshita, Y. Shimizu, Numerical simulation of tidal current in the coastal region with an artificial seabed mound for upwelling, Proceedings of the 24th International Conference on Offshore Mechanics and Arctic Engineering, pp.419-423, 2005
3) S. Tabeta and M. Fujino, Comparison between simulation results and field data about currents and density in Tokyo Bay, Journal of Marine Science and Technology, Vol.1, pp.94-104, 1996.
4) T. Kinoshita, S. Tabeta, M. Fujino, Numerical simulation of artificial purification system by using hydrostatic and FULL-3D combined model, Proceedings of the 22nd International Conference on Offshore Mechanics and Arctic Engineering, pp.743-748, 2003.
5)Y. Nishi, S. Tabeta, Analysis of the contribution of ice algae to the ice-covered ecosystem in Lake Saroma by means of a coupled iceミocean ecosystem model, Journal of Marine Systems, 55, 249-270, 2005


その他

日本船舶海洋工学会、日本沿岸域学会、日本海洋学会、日本水産工学会、Marine Technology Society、各会員
日本船舶海洋工学会・東アジア海洋環境モデル研究委員会委員長(2006~)、同・海洋工学・海洋環境分野研究企画部会委員(2005~)、同・東部支部会務委員(2006~)、日本沿岸域学会・企画運営委員会委員長(2006~)、国土交通省・タンカーのダブルハル化推進に関する検討会委員(2004)、日本造船技術センター・超大型浮体式海洋構造物安全性評価検討委員会委員(1996)、日本海洋工学会・理事/運営委員(2005~)、海洋工学懇談会・庶務幹事(2002~)、生態系工学研究会研究員(1998~)、等。


将来計画

今後も海洋環境問題の解決や海洋を利用した人類の持続的発展のための技術開発への貢献を目的とした研究を行っていきます。人間活動が多大な影響を及ぼしてきた沿岸海域に関しては、環境の保全・修復・創造に資するため、陸域・沿岸域・外洋域の相互影響を考慮して物理・生態系・社会経済の多角的な視点から海洋環境システムを分析評価します。また、漁場造成と二酸化炭素隔離効果が期待される海洋滋養技術など、地球温暖化や食糧問題解決のための海洋利用に関する研究も進めていきます。


教員からのメッセージ

新しい専攻、新しいキャンパスから人類の幸福に貢献する新しい研究が生まれることを期待しています。私自身も広い視野を持って新たな分野に挑戦していきたいと思います。



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