現在、地球温暖化対策の一つとして、Carbon Capture Storage (CCS)が大きく注目されている。現在計画中のCCSは、ノルウェーのスライプナーやアルジェリアのインサラーで実施されているCO2帯水層貯留が主流であるが、この帯水層貯留だけでは、将来の我が国のCO2削減の数値目標達成に対してCCSが期待されるであろう量には不足する可能性がある。そこで本研究では、新たな地中貯留方法としてCO2ハイドレート貯留に注目した。
この貯留方法では、CO2ハイドレートが生成可能な高圧・低温条件の海底下堆積層にCO2を圧入しながら、堆積層内の間隙水と反応させハイドレート化することで、CO2をハイドレート固体として貯留する。このとき、堆積層内の間隙にハイドレート固体が生成することで生じる閉塞を回避し、ガスフロントの移動を拡大することで貯留領域を広範囲に広げることが重要となる。そこで、ハイドレート格子に取り込まれない熱力学的生成阻害剤となるN2をCO2に一定の割合で混入して圧入することで、閉塞を回避することを提案した。
本研究では、まずハイドレート貯留の技術的課題である、ハイドレート生成に起因した閉塞現象を実験的に確かめるため、海底下堆積層を模擬した砂層にCO2を圧入し、砂層内にハイドレートを生成させ、ハイドレート生成を伴った砂層内の基礎的な流動現象を把握した。次に、ハイドレート生成を伴う砂層内の流動現象をモデル化し、構築した流動モデルを用いた貯留シミュレーションを実験条件下で実施し、実験的に確かめた閉塞現象を再現することで、閉塞メカニズムを明らかにした。
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海洋技術環境学専攻
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