#

プロジェクト

Projects

北極海の航路利用、その実現の先頭に立つために

  • 山口 一 教授、 早稲田 卓爾 教授
文部科学省北極域研究推進プロジェクト(ArCS, Arctic Challenge for Sustainability)
北極気候 ・ 気象 ・ 海洋環境変動研究分野(2015~2020年度)
気象 ・ 海氷 ・ 波浪予測と北極海航路支援情報の統合



 南極に比べて氷の少ない北極は、地球温暖化の影響を最も受けやすい場所で、地球平均の2~3倍の早さで温暖化が進んでいます。また、北極の変化は、日本を含む地球全体の気候にも大きな影響をもたらすことが判りつつあります。さらに、近年、特に夏の北極海の海氷面積が急速に減少してきています。これにより北極海を商業航路として利用することが現実味を帯びてきました。もしこれが実現すれば、日本と欧州、日本とアメリカ東海岸との距離を大幅に短縮することができます。

 変化する北極域の現状を把握し将来を予測するため、文部科学省のGRENE北極気候変動事業、それに引き続き、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)が国立極地研究所など全国数十の研究組織、数百名の研究者が参加してすすめられています。その中で、当専攻は、北極海の航路利用のための研究群を、主導しています。北極航路は、これまでのスエズ運河やパナマ運河を通る航路に比べて、ヨーロッパ・アジア間の距離や東アメリカ ・ アジア間の距離が3~5割短縮されます。すなわち燃料が節約され、CO2排出が少なくなります。これは、IPCCの報告書にも書かれている緩和策(地球温暖化を遅らせること)と適応策(温暖化による気候変動に社会システムを適合させること)の両方が同時に実現できる希有な例です。更に、日本は北極海に最も近いアジアの国であり、アジア物流の最上流に立てる機会でもあり、日本にとっても大変重要な意味を持ちます。

 北極海の航路使用を実現するためには、気象 ・ 海象のほか、海氷分布の予測という自然科学的な視点、海氷が船舶に及ぼす影響の把握や航路決定のための技術開発という工学的な取り組み、さらには航路利用の経済性評価や国際ルールの取り決めという社会科学的アプローチが必要です。この研究課題の大きな特徴は、民間企業の研究者も含む様々な分野の専門家がメンバーに含まれ、協同して研究をすすめる点にあります。その中で、数値モデルとデータ解析による気象 ・波浪 ・ 海氷分布予測、人工衛星データから海氷の状態を把握するための手法開発、海氷のある海で船舶がうける様々な影響の把握、北極海航海の経済性評価などをすすめています。

 最終的にこれらを統合し、北極航路の航行支援システムを作ることを目指しています。この研究による成果は、北極航路の利用を促進し安全な航行に役立てることができるほか、今後ますます注目を集めるであろう北極海の開発において、日本が先導的役割を果たすための大きな力となるはずです。

参考URL
http://www.nipr.ac.jp/grene/
http://www.arcs-pro.jp/

研究の枠組み
研究の枠組み
北極航路 : アジア ・ ヨーロッパ間、アジア ・ 東アメリカ間の距離を3~5割削減
北極航路 : アジア ・ ヨーロッパ間、アジア ・ 東アメリカ間の距離を3~5割削減
船首からの波しぶきで起きた船体着氷
船首からの波しぶきで起きた船体着氷
観測航海中の砕氷観測船
観測航海中の砕氷観測船


前の記事へ 次の記事へ

ページの先頭へ